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Channel: 洋食『マーシュ亭』
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時間が余ったから、ソースの話。

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今日はデミグラスを仕込んでおります。

イメージ 1

ソースエスパニョル。
ドゥミ(半分)グラス(煮詰める、煮詰めたもの)だからデミグラス(ドゥミグラス)です。
以前にも説明しましたように、昔のホテル、レストランではデミグラスが主流でした。
エスコフィエの『ル・ギード・キュリネール(料理の手引き)』なんかもソースエスパニョルを使ったルセットになっております。
現在のフレンチレストランではフォンドヴォーが主流になっております。
説明しましたように様々な理由があるのですが、その1つに料理の簡素化があります。
何でもそーですが、手間をかけて複雑な完成度が高いものほど用途が狭くなります。
料理のソース以外も同じですな。
人間もそーかも。
潰しがきかないんですよ。
デミグラスみたいなソースは、ある意味それだけでもムマイソースです。
完成度が高い。
フォンやジュってのは、そのままじゃムマくないの。
あくまでもベースですから。
でね、完成度の高いソースを仕込むならば料理によって様々なソースを作りストックしておく必要が出てきます。
レストランが縮小化して小規模なレストランが増えると実際問題として狭い厨房内でストックスペースも限られてきます。
ですからベースだけ仕込んでおいて、料理によって様々なソースに派生させる方が便利じゃね?みたいな考え方から必然的にデミグラスが消えていったわけ。
この簡素化を最初にやった料理人が前出のエスコフィエです。
アントナンカレーム時代の複雑な料理法やソースを簡略化して料理人の仕事をやりやすくしたわけ。
現在では、エスコフィエの料理でさえ複雑過ぎてやる人はいませんが(笑)
ただし、彼の考え方は現在も引き継がれております。
モツロン他にもいろんな理由がありますけれど一番の理由はこれでしょうな。
アタシが思うに、世の中のあらゆる発明ってのは人間の日々の生活から必要に迫られて絞り出したものだけが大衆の支持を得られるんじゃね?

デミグラスをベースにしたソースと、フォンドヴォーをベースとしたソースの大きな違いは凝縮感です。
フレンチの場合、ソースを煮詰める(レディール)する作業は昔から行われていました。
ただし、現在と昔では煮詰める度合いが全然違います。
昔はある程度煮詰めてからデンプン等を利用してリエゾン(濃度をつけるために繋ぎを加える)してから味を仕上げるわけ。
現在は液体を徹底的に煮詰めることによって凝縮感を出し、更に濃度をつけていきます。
最近は更に違う考え方も出てきましたが。

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デミグラスの味わいを『混合物』的だとすると、フォンを使った現在のソースは『エッセンス』的です。
デミグラスは主材料に味をつける、マスキングするためのソース。
現在のソースは主材料に風味を加える!的な存在が多いです。
そーゆー料理人の考え方の変化も理由の1つです、ハイ。

イメージ 3



しかしながら作る料理の数によっては煮詰めるにも限度がありますな。
ホテル等で大人数の料理を作る場合は昔のソースが便利です。


じゃ、デミグラスはムマくないの?
イエイエんなことはありません。
実際にデミグラスを使ってムマイ料理を作っているレストランも沢山あります。
また、デミグラスと一口に言っても料理人によっては全然作り方も違います。
煮詰め具合、リエゾン、その他最終的な仕上げかたは人によって全く違います。
デミグラスやベシャメル、ヴルーテ、ホワイトソースなどルー(小麦粉とバター)でリエゾンしたソースの問題点は『すぐに表面に膜が張る』こと。
空気に触れるとすぐです。
これが厄介なんですよ。
蓋をしたりして空気を遮断したり、使う度に網等で濾したりします。
ポタージュも同じだね。

でも、洋食みたいな料理にはデミグラスはよく合いますな♪
味付けによってはゴハンにもあいます。
特に日本人ってのはソース=タレってイメージご強いから(笑)
フレンチのソースは日本人のタレとは少し違いますから。
また、料理のムマさってのは理屈よりも生理的な要素が強いもんです、ハイ。
そこら辺のバランスっつーか、くすぐり方がムマイ料理のポイントだと思うのよ、ってかマヂで。

今度の店はヤパシデミグラスをベースにしたいねぇ。
マーシュ風のデミグラス。
なるべく用途を広げたいからね。
工夫して作りますわ。


ってなわけで、デミグラスを煮ているあいだ暇だったんで(笑)
長々とツマラン話を失礼しました。

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